今から20年前、世界トップクラスの住宅先進国である北米の住宅街を初めて見た。ため息をつく程に「どうしてこんなに美しいのだろう」と感じた。

帰国後、その事を日本の設計士に伝えると、「欧米は土地が広いからこんな風に出来る」と言った。しかし、暫くしてその答えは間違っていると確信した。

欧米の設計士の多くは、先人の設計士から受け継がれたデザイン様式をベースとしてそこに少しだけ自分のオリジナリティーを入れる。決して自己流の思いつきのデザインはしない。何故なら売却時にクライアントの財産を大幅に目減りさせてしまう恐れがあるからである。

日本の建築雑誌や家づくり雑誌に掲載されている建物の多くは、奇抜で10年も過ぎれば流行遅れになると予想される根拠の無いデザインの建物が殆どである。その理由として日本の建築士が世界に通用するデザインとその歴史を学んでいないからである。

又、他の要因として戦後の住宅難を解消する為、車の様に住宅をラインで大量に作るシステムに国も全面的に支援して来た。その結果、既に供給過剰となったがラインは可動し続けなければならず、その為、車の様に常に新商品を出し続け、物理的には十分使用可能な建物でもデザイン的に飽きが来ることとなり、消費者の建て替え欲求を煽り続けている。

もし、欲しい家があったとしたら築30年後を想像して欲しい。本当にその家にローンを払い続ける魅力があるか否かを考えてみては如何だろうか?

創業昭和四年 安城建築 浅井宏充